消費すること、されること―Birdlandを見て感じたこと
アイドルを応援しながら、いつも漠然と不安に思っていることがある。
好きを免罪符にして、誰かの人生を消費しているだけなんじゃないかって。
アイドル、というか三次元の人間を追ってる人の一定数は同意してくれるんじゃないかなぁ。
「結婚しづらい」とか「プライベートがない」とかいうのもそうだけどそれ以上に、
「エモい」とか何とか言って、好きな人の辛い思いや苦しみさえも
エンタテインメントとして楽しんでるんじゃないかって、ふとした瞬間にゾッとすることがあります。
Birdlandはそんな漠然とした不安を、一気に具現化して目の前に突きつけてくるような舞台でした。
※舞台のネタバレを普通にします。
※1回見ただけで震えながら打ってるので記憶違いかもしれないし明日見たら解釈が変わるかもしれない。
上田くん演じる世界的ロックスター・ポールが、人気絶頂のうちに行ったワールドツアーのなか、スター故の苦悩や孤独や高揚感ゆえに破滅に向かっていく――とまあざっくり言うとそういう話なのですが。
そんなの好きじゃん!!しかも親友の女寝取るって!!と意気揚々とチケットを取ったものの、いやあそんな生半可な心意気で見るもんじゃなかった……凄かった……
推しが狂った役をやるのはまあ大好物で、上田くんは歴代の推しの中でも特に狂気に満ちた演技が上手いなぁと思っているのでそれはもう最高だったのですが、
最高だからこそ、その狂気の根本に「わたし」がいることにやられてしまった。
富と名声を手に入れたポールが狂っていく要因はひとつではなく、
たとえばドラッグだったり、
何でも望めば手に入るが故に何も信じられないことだったり、
周囲の人間への猜疑感だったり、
あるいは頂点にいるが故の未来への漠然とした恐怖だったりするわけですが、
なにより大きな要因として「誰も彼もに存在を知られていること」があります。
物語の早い段階から、ポールはときおり「見ている誰か」への怯えや不快感を見せていました。
その相手は自分を嗅ぎ回すマスコミだったり、宿泊先のホテルを取り巻く熱狂的なファンだったり。
「あいつら」とポールがステージの上ではないどこかを見るたび、それは客席に座る私たちなのではないか、上田くんも「参加型だから」みたいなこと言ってたしな~と1幕の時点では漠然と感じていたそわそわが、2幕終盤、物語のクライマックスで喉元に突きつけられます。
(いろいろあって)社会的にも精神的にも追い詰められたポールは、はっきり客席――我々を指さして、その視線への恐怖を訴えるのです。
客席の照明がついた瞬間のあの血が逆流する感じ、思い出すだけでぞわっとするなぁ。
こそこそ覗いていたつもりだったのに、実は全部バレていて、舞台上に無理矢理引きずりあげられる感じ……舞台ならではの演出だなぁと震えました。
それが無理筋ではなくがつんと来るのは、何もポールが恐れているのが
敵愾心を持って己を探る者たちばかりでないというのがわかるから。
物語の序盤、ホテルを取り巻く者たちの姿に、ポールはこんな風に言っていました。
「何であいつら、四六時中俺を見ていやがるんだ?
俺のすること全部に執着してる」
──ああ、「あいつら」ってわたしじゃん、って思っちゃうよね。
別に私は推しているアイドルのプライベートを何もかも知りたいとは思わないけど、でもそれだって言い訳で、作品だけではなく人間に興味を持ってしまっている以上、この気持ちはどこかで対象を苦しめることにもつながるんだなあ、なんて。
ポールだって何もファンを目の敵にしているわけではなくて、近寄ってきたファン(これがまたちょっと気持ち悪い感じのファンで別の意味で「わたしじゃん……」て凹んだ)にサインしてあげたり、遠くから来てくれるファンたちのことを「昔の自分を見ているみたいだ」と愛おしそうに語ったりもしています。
根源で自分に自信の無いポールにとって、ファンからの歓声というのは何にも代えがたい動力でもあるのでしょう。
それが必要なのに、それがある故に苦しむこともあるなんて、わかるだけに辛いじゃん。
上田くんは舞台に関するいろんなインタビューで、ポールの孤独がわかるところもあるという趣旨の発言をしています。
限られた人間しか味わったことのない体験をしているからこそ、演じるポールの狂気や苦しみにより説得力が生まれるのだろうと思います。
それを苦しく思うのも、思いながら舞台に通ってインタビューを漁ってクソキモいブログを書いてるのも、
突き詰めれば私はアイドル上田竜也という存在を消費しているということなのだろうか。
でもアイドルってたぶんそういう商売だし、わたしたちは金銭や歓声という対価を払って、与えられるものを啜っていくしか応援の術はないわけで。
これからも仕方ないよねって共犯者ぶってわたしはずっとアイドルを応援していくんだろうなと、そんなことを思ったBirdlandでした。