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ノイズの中の光─Birdland再考

幸せの青い鳥はほんとはずっと近くにいた、なんて言葉で総括したら陳腐すぎるけど、ポールが追い求めていた「ノイズの中にある光」って、ほんとはずっと近くにあったものたちなのかもしれないとそんなふうに思った。

 

私のBirdlandが愛知で終わったので何となくの総括です。
見た人向けなので説明もないし普通にネタバレしかないよ。
1度見たときのオタク的不毛な感情は以下↓

submarine.hatenadiary.jp

 

1幕でポールとジョニーが寝転がってマーニーの話をするシーンと、2幕で二人が寝転がってポールがジョニーにマーニーとのことを告白するシーンが対になってると気づいてから、ポールとジョニー、2人のことばかり考えながら見ていた。

 

2幕でポールが言っていた「ノイズの中にある光」って言葉がずっと心に残っている。
他でもないジョニーが、また何か変なこと言ってるみたいな態度だったのが悲しい。

そんなに求めていた光が、物語が進むにつれ、近づくどころか遠ざかっていく。
モスクワで二人並んで空を見上げたときには銀河系まで見えていたはずなのに、2幕で空を見上げたときには深い黒に塗りつぶされてしまっている。

ポールはずっともがいている。
マーニーに手を出したのも、ジェニーを連れて行ったのも、何かを打破するためだったんじゃないかと思う。
ひょっとしたらドラッグだって最初は、見たことのない景色を見るためだったのかもしれない。
それが音楽のためだったのか、もっと広く、人生をどうにかするためだったのか。ポールはきっとそれを切り離せなかったんだろうな。
ベルリンでポールが夫妻に語ったステージ上の見え方、普通の人間だったら薬物でハイにでもならなければ感じられない描写だ。
てっきりヤク中だからだと思って聞いていたけれど、ひょっとしたら素面でも、ステージに立つ興奮というのは桁違いなものなのかもしれない。
そんな強い刺激を浴び続けで、まともでいられる方がおかしいのかもしれない。

一方でジョニーはずっとまともだ。
薬物をやりはするけど大して溺れず、付き合っている女の両親に会いに行こうとし、面倒なスポンサー夫妻の相手をする。何よりあのポールを支え続けているのだ。
私はどうしてもポールの側から見てしまうので、時にその「まともさ」がもどかしくも感じてしまうのだけれど、まともであろうとしなければ、ポールの隣になんかいられなかったんだろうなとも思う。
彼女の前で他の女とキスしろといったり、午前三時に突然部屋に忍び込んできたり、大げんかした後でも「連れて帰ってくれない?」と頼まれれば、「そうしなきゃ嫌なんだろ」と返して連れて帰ろうとしてくれたり。
そんなまともなはずのジョニーが、幼いこどもを使うような真似をするくらい壊れてしまったのは、それはポールの罪だと思う。

1幕の最後、ポールに次々と二者択一の質問を投げつける人々の中にジョニーはいるけれど、ポールに何かを問いかけてくることはない。
ポールに腹を立てつつも、ぎりぎりのところで離れずに付き合ってくれていたんだろう。
それが2幕、マーニーと寝たことを告白した後からは、ジョニーはポールを声に出して糾弾する側にいってしまった。あの告白でついに向こう側に行ってしまったんだろうな。
2幕のあのシーン、英語のシナリオではセーヌ川のほとりが舞台だと書かれている。
かわむこうにジョニーが渡ってしまったのか、あるいはそうしたのはポールなのか。


これは特に根拠のない印象なんだけど、ジョニーはポールの才能に惚れていたと言うよりも、単純に「友達」だったんだろうなと思う。
もちろんアルバムに入るような曲を作っているわけだからジョニーだって才は十二分にあるんだろうけれど、ポールのポエムじみた言葉にはわけがわからないという顔をするし、マイケル・ジラも知らない。
でも、だからこそ飲み込まれずにいられたし、ポールにもそういうのがよかったんだろうな。

ポールがあたたかく、まともな目をして語るのは、昔ふれあった地元の子たちの話だ。
ジェニーの話をデイヴィッドに話すとき、「地元の子たちを思い出す」と言っていたり、ジョニーと二人で地元のライブハウスの思い出話をするとき。
最後にジョニーと話すシーン、思い出話をするポールは本当に愛しいもののことを語る人間の顔をしている。
ポールが追い求めていた光はきっとそこにあって、でも、それがわからないから手に入れるための手段を間違えてしまったんだろうな。


あんな物語の後でも私はポールに生き延びてほしいけれど、求めていた光は最初よりずっと遠ざかっている。
でも、死んでしまったらずっと灰色の世界で、光だって手に入らない。
どんなに苦しくても、何もかも失った状態でも、もう一度、ノイズの中の光を見つけることを諦めないでいてほしい。
そんな風に思ってしまうのも、彼にとっては残酷な望みなんだろうか。