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KAT-TUNと7 MEN 侍とか

平均点の人生と優しさと─After Life所感

After Life、終わっちゃいましたね。

千穐楽に「寂しい!!」でいっぱいになるくらい、作品自体もとても好きだったし、上田くんはじめ出演されているみなさんが楽しそうで、終わっちゃったのがとても寂しい……

ので、After Lifeの思い出をかみしめつつ、見ながらぼんやり考えていたことをしたためようと思います。

 

After Lifeがこんなに心に刻まれている理由はいろいろありますが、一番は、初日の一幕でもう「私にとっての答え」を貰えてしまったからです。

それが、2番がモチヅキに言った「平均点の人生なんてないですから」という台詞でした。

そこそこの大学を出てそこそこの企業に就職してそこそこの結婚をしたと自任するモチヅキが「自分の人生にはそれなりに自信があるつもりだったのに」と言いながら思い出を選べずに悩んでいるとき、投げかけた言葉です。

その後、モチヅキの妻が2番の忘れられない恋人であり、上記の台詞を言った時点で2番はそれを知っていたことがわかると、この台詞はまた印象が変わってきます。2番がなりたくてもなれなかった人生を「平均点」だとは思ってほしくなかったのだろう、と。

 

でも、2番の過去を知ってもなお、私は毎回この台詞を聞くたびちょっと泣いてしまいます。

 

After Lifeは「死んだ人間が、たったひとつだけ残したい思い出を選択する」という設定の舞台です。

それを初めて知ったとき、私はモチヅキみたいに、「持っていけそうな思い出なんてないな、私のこれまでの人生って何なんだろ……」という気持ちになっていて。
ちょうど人生の節目的なイベントをいくつか乗り越えたタイミングで、「私の人生の登り目はこの辺までかなぁ」という、たぶん燃え尽き症候群だったんですよね。

それが、初日見に行ったら、あまりにドンピシャな台詞がきてびっくりしたというか、大げさに言えば「救われたな」と感じてしまったんです。

その気持ちは二幕で2番の過去がわかってもまったく変わらなくって。
きっと私は一生、After Lifeのことを思い出すときこの台詞とあのときの気持ちも思い出すんだろうな。

 

あの台詞があの場所にあったのは別に私を救うためではなくそういう物語だからだと、全部見た後なら思うんですが、でも案外、他人から言われたことやされたことで覚えてるのってそういう、相手からしたら意図せず何気なく行ったことだったりしませんか?

逆に自分が何の気無しに他人に言ったことを、あとあとになってその人から「あのときこう言ってもらったのが嬉しかった」と言ってもらえてびっくりしたり。

究極、優しさってそういう、相手の意図がどうかじゃなくって、「された側がそのときどう感じるか」なんだろうな、と、そんなことを思いました。

 

始まる前「優しくてにこやかな役」みたいなことを言われていたせいか、幕が開けてみると、2番って言うほど優しくないよなぁ、みたいな印象もありましたよね。

笑顔の奥では昔の女のことばっか考えてるし、とくに4番といるときには多少独善で頑固なところも見えたように思います(79歳だからね!)。

でも私は、その言葉にどんな意図があれ私自身が救われたからこそ、2番は優しい人だなと思っています。言葉にして伝えることの難しさを、彼はきちんと乗り越えているから。

 

一方で、2番はベアトリスに対して、本人が口にして望んだ思い出は提供しませんでした。

4番と口論になったとき、彼女は2番のその好意を(本意でないにしろ)「偽善者」と罵っていて、確かにそういう捉え方もできるなと思います。

でも、土曜を前にしてベアトリスは2番に「あなたがつくったものを楽しみにしてる」と言っていました。

それってきっと、「どんな思い出を選んだか」っていう結果だけじゃなくて、「2番がどれだけ真摯にそれをつくったか」をベアトリスが感じていたからなんじゃないな。

「貴女を戸棚の中には戻しませんから」と2番が冗談めかしてベアトリスに告げた言葉。狭い戸棚の中は、あのセンターに永遠に留まっている彼らを思わせます。

自分たちのようになってほしくないというある種の自己救済の気持ちがあったのかもしれないけれど、始点がどこであれ、彼がクライアントの幸せを願い、それをクライアントが受け止めたこと、全部含めてそういうものが、人間の優しさってやつなんだろうな。

 

……何が言いたいんだっけ? えっと、2番は優しい人だし、私ももうちょっと、袖擦り合う人たちに優しくしていきたいなぁと、なんか素直に思えたなという話でした。

(でも生前のあの様子からしてチャーリーかなりめんどくせ〜〜男だったんだろうな〜〜絶対生きてる間に出会いたくない、とも思う笑)

 

これだけでは何なのでサイコー2番の話もしていいですか? しますね!!

  • 冒頭の「アメリカ」のかわいらしさに毎回目眩がした(ふせったー使って「○○○○」の話してる人全員「アメリカ」の話してたしメロメロだった)。
  • 人に「言葉遣い!」と注意する上田竜也、多分もう一生見られない。
  • ベアトリスに両手を差し出して一緒に踊る2番、この人生きてる間はかなりロマンチストで気障ったらしかったんだろうなと思った。
  • 土曜日に照明の櫓に登る2番がやたら俊敏で、あれはさすがにチャーリーじゃなくて上田竜也だった。
  • 4番へのデコチューに毎回メロメロになってた。千秋楽何かやたら長かったし前髪ちゃんと掻き分けておでこにチューしててさあ!終わったあとのインライであのチューこと、「4番は恋愛できずに死んだ子だから、ある意味それに付き合ってあげた」みたいな話をしてて倒れた。
  • みんなに頼られているようで、5番には「君はこの仕事に乗り気じゃなかった」と言われる2番が、4番に一生懸命ガイドの仕事を教え込んでいるの、きっとガイドの仕事に戸惑う4番にかつての自分を見出していたんだろうし、最終的に己の仕事に心からの誇りをもてた要因の一つにもなったんだろうな。